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こういう読み方ができるようになりたい 書評:子どもの本を読む

本書の著者は日本におけるユング心理学ユング心理学 の第一人者河合隼雄河合隼雄 である。私はユング心理学というのがどういうものなのか知らないが、もしかしたら本書にはそういう視点が相当に含まれているのかもしれない。けれど、私は納得できるところが多かった。

河合は児童文学の課題を「子どもの目をもって、ものを見つつ、言語表現によってそれを表現すること」と言う。本書では、そういう視点で選んだ児童文学を紹介している。

作品名だけ挙げると「飛ぶ教室」(ケストナー)、「まぼろしの小さい犬」(ピアス)、「思い出のマーニー」(ロビンソン)、「ぼんぼん」「兄貴」「おれたちのおふくろ」(今江祥智)、「ヒルベルという子がいた」(ヘルトリング)、「長くつ下のピッピ」「ピッピ船にのる」「ピッピ南の島へ」(リンドグレーン)、「ねずみ女房」(ゴッデン)、「ふたりのひみつ」(ボーゲル)、「つみつみニャー」(長新太)、「首のないキューピット」(スナイダー)、「砦」(モーリー・ハンター)、「わたしが妹だったとき」(佐野洋子)。私はどれも読んだことありません。

河合の解説を読んで、私は以前読んだ「本を読む本」のことを思い出した。この中で著者モ-ティマ-・J・アドラ-は「文学作品を読むときは、文学の影響力に抵抗してはならない」と説いている。要約すると「その文学作品の世界をそのまま受け入れなさい」ということである。自慢じゃないが、私はコレがヘタだ。すごーく、ヘタ。河合はこれができる人である。

私はどうしても話の整合性・合理性を重要視してしまう。作り話なんだから多少のことは目をつむったっていいのに、それができない。子どもの絵本くらいならどうとでもなるが、文字だけが並ぶ本では矛盾が出ると「うーむ。」となり、それが続くとあっという間に評価が下がる。

河合が「本を読む本」を読んだことがあるのかどうかはわからないが、似たようなことを本書の中で書いている。

読者は、私の書いていることが、その作品の「外に」あまり出ていないことに気づかれるだろう。(中略)ただ、作品の内容に則して語っていることが多い。(かなり中略)ともかく、「好き」と感じた対象に対して、ひたすらその世界の中に沈潜してゆき、他との関連についての配慮を出来るかぎり少なくしてゆく。(子どもの本を読む より)

私は「本を読む本」を読んだ時にコレができる人ってのはどういう人なんだろうと疑問に思っていた。いや、正直言うと「悪い意味で相当に感情的な人だろう」と思っていた。ところが、本書を読んだいま「理性的で感情的な人」という人がいるような気がしてきた。私もこういう読み方ができるようになりたい。

つくづく著者の人柄というか、そんなものを実感する一冊である。

でもね、やっぱり文学作品の中に入りすぎてるような気もするんだよね。しょせん私は凡人です。

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コメント / トラックバック

  1. nao
    2010年05月09日 日曜日 22時17分

    とてもよい書評(感想)だなと思いました。
    「・・話の整合性・合理性を重要視してしまう」とありますが、
    自分の場合は、作品の物語世界にはいってしまいます。
    その時、論理的思考は見事に欠けているわけです。
    雰囲気に引っ張られるまま・・押し流されるまま・・。
    「こんなのアリか?」と指摘されても。
    「アリじゃないのかなぁ・・」とテキトー(鈍感とも)。
    なので、論理的思考回路を働かせられるヒトの方が、
    自分には驚異的で凄いこと、と思います。
    河合氏は物語の深部に入り込み、かつそういうこころの動きのありようを、
    明解に分析できるからまた凄い(自分には無理。凡人だもの)。
    「・・文学作品の中に入りすぎてるような気もするんだよね」との指摘はその通り、
    けれど、そんな読み方しかできない(もう変えられません)。
    河合氏の本では「昔話と日本人の心」「コンプレックス」がよかったですよ。
    また、本のこといろいろ教えてください。
    ブログ応援しています!

  2. 管理人
    2010年05月10日 月曜日 22時51分

    naoさん

    >自分の場合は、作品の物語世界にはいってしまいます。

    >けれど、そんな読み方しかできない(もう変えられません)。

    お互い、他人のバラは赤く見えるのかもしれませんね。私には物語世界に入れる方がうらやましいですよ。一冊の本からもらう感動が私なんかよりずっとずっと深いのではないかと思います。

    >河合氏は物語の深部に入り込み、かつそういうこころの動きのありようを、明解に分析できる

    そうなんですねー。本書でも河合氏は「こういう読み方には修練が必要だ」としています。ま、これからいろいろ試してみようと思います。

    >河合氏の本では「昔話と日本人の心」「コンプレックス」がよかったですよ。

    今度探してみますね、古本市で出てるといいなあ。

    今後ともよろしくお願いします。

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