娘と病院ごっこ。「体温計でお父さんのお熱を測ります!お父さんのお熱は・・・、82度!」
いまから20年以上前、私が高校の修学旅行で広島へ向かう途中、JR上野駅からJR東京駅まで山手線に乗らなくてはならなかった。物心がついてからは初めての山手線である。
ホームにつくと電車が発車した直後で、友達と「あーあ。」・・・ところが、すぐに次が来た。これには驚いたなあ。
「東京ってすごいね。」
そんなウブだった私もいまでは「えー、10分も待つの?」とブーたれる。いけませんねえ。
本書には日本の鉄道のすごさを端的に示す数字がある。海外の鉄道の定時運転率はおおよそ90%(1992年)、日本のそれは新幹線で95%、在来線で87%(1999年度)である。あまり差がない?
いえいえ、違います。何が違うって、定時運転の定義が違う。フランスで遅延と見なされるは15分以上遅れた場合、イギリスは10分以上で、日本はなんと1分。たった1分遅れただけで「はい、遅延。」
日本の鉄道が何故これほどまでに正確な運転ができるのか不思議である。もちろん努力の結果であることはわかるが、やはり不思議である。本書はこの不思議に迫ろうとする。
鉄道というシステムの大きさを考えるとやむを得ないのかもしれないが、本書が指摘する定刻発車のキモはかなり大雑把だ。加えて、文章が冗長な印象が拭えない。丁寧といえば丁寧だが重複が多いと思う。重複を削って、一つ二つくらいはもっともっと深く説明して欲しかった。随所に掘り下げることができそうな驚きのエピソードもあるだけに残念だ。
著者によると日本の定刻発車を支えているのは・・・、
- 他国に比べて短い駅間
- 様々な調査に基づいた細密な、それでいて余裕のあるダイヤ
- 運転士の運転技術
- 長年に渡って積み重ねられた、復旧に向けたマニュアル
- 職域を超えた協力関係
- これら全てを当たり前だと思う風土
と言ったところか。読んでみると、一つ一つは意外と人間っぽいんだよな。
私が勤めているの会社でも、大小合わせると結構な数の事故をやらかしている。事故への対処は「ちゃんと確認をする」などといった精神論に終始していて、事故が減るという希望がもてないのがツライところだ。ウチの会社も、たとえそれが人間っぽいものであっても、事故をシステムの一部として考えられる風土だったらなあ・・・。
読了後私は、駅員の一つ一つの仕草、列車の加減速、線路の状態、その一つ一つに定刻発車への工夫があるのではないかと疑い、その工夫を探すようになった。本書は鉄道というものの見方を皮切りに、人が支えているシステムの見方を変えてくれると思う。
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先日,東武東上線にの最後尾に乗った時、車掌室内にある時刻表が見えました。
その数字が丁寧な手書きだったんです。
その時は、へー手書きか、としか思いませんでしたが、
この文を読んで心がけて人間っぽいところを重要視した結果なのかもしれないなと
思いました。
nunoさん
>その数字が丁寧な手書きだったんです。
この場合の手書きは単にオンライン化が追いつかないのだと思いますが、時刻表などを手書きする場合は複数人で「書く、復唱する」という手順を踏むようです。すごいですよね。
知ってましたか?
そんな鉄道のシステムを作っている人たちは5秒の処理遅延で…
愚痴っぽいのでAC
Anonymous Cowardさん
システムだと5秒ですか。渡しとしては5秒くらいは許してあげたいところですが。
この本が後に新潮文庫になった直後に、JR西で脱線事故がありました。
おかげで、いい内容の本だったのに「当店イチオシ」のPOPをつけられなかった、というのを思い出しました。
黒猫屋さん
>いい内容の本だったのに「当店イチオシ」のPOPをつけられなかった
そういうこともあるんですね。実際、本は売れたのでしょうか。
この本の感想で脱線事故に触れている人が随分見受けられます。本書を読んだいま、人をシステムとして使うことの限界も感じます。結局、人間の人間たる所以は不完全さなのかもしれません。
>実際、本は売れたのでしょうか
時期が時期だけに売れませんでした・・・
自分は買ったけど