創元社「知の再発見双書」シリーズの一冊。このシリーズは惹かれる本が多くて、これで4冊目だ。毎回書いてるような気もするが、やはり図版の多さが魅力で、内容がわかりにくくても図版を見て楽しむことができる。
本書は文字の歴史を扱っているが、途中からはその保存方法などにも触れている。つまるところ、他の同類の本と内容がかぶるところがある。私が本書に期待していたのは「文字の解読」についてだった。もっと解読方法の手順に触れて欲しかったのだが、残念ながら解読の歴史、それも概要にとどまっている。ま、私のワガママだが。
ヒエログリフ
や楔形文字
とはどうやって解読するのだろうか。長い研究に負うところが大きいが、傑出した人物の登場で飛躍的に解読が進むときもある。
シャーロック・ホームズ
の中に、踊る人形
という話がある。ホームズが現場に残された暗号を解読する場面が描かれている。いま改めて眺めてみたが、文庫本なのに(?)、その暗号(小説の中では象形文字と書かれている)が3行取で描いてある。ホームズがその象形文字を一つ一つ解読していく過程も描かれている。私は子供の頃、この部分を読んでとても興奮した。しかもホームズは最後の最後、この象形文字を自ら使い、犯人を捕まえるのだ。子供の頃に読んだ「踊る人形」はいまでも、文字の解読という分野に私を惹き付ける。
現在の私たちにとっては暗号のような文字でも、当時の人はごくごく普通に使っていた言葉だ。それが時代とともに伝承されなくなり、最後には暗号のようになってしまう。
近代においてはそんなことはないと思うかもしれないが、私たちだって明治時代の文章を読めばそのギャップを感じることだろう。いまは文字の変遷をしっかりと記録しているので、5000年後でも読める可能性はかなり高いが、言葉の変化は免れない。
本書の中で興味深い一節があった。
(「文字の歴史」内、ジャック・ジェルネ「様々な民族の文字と心理」 より)
表記法が古代から現代までずっと変わっていないということは、文字が形を変えることなく、各時代に生まれた様々な意味をそのまま担っているということである。つまり、中国の文学者が頭を抱える問題は、文字が豊かで複雑すぎるということではなく(中略)様々な時代に様々な使われ方をしたために、文字の意味と用法が錯綜していることにあるのだ。
文字はその形が変化しても変化しなくても、人類とともに変化してきたのだ。
この本について
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