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大人の言葉遣い 書評:無名

著者・沢木耕太郎沢木耕太郎 が父の最期を綴った本。父の死後に句をまとめて句集をつくるところまでが描かれている。感情の起伏がなく、淡々と語る中に父の生涯に思いを巡らせている様子が見える。

父は戦前裕福な家庭で育ったが、親族の経営する会社が倒産してから一転して戦後どこにでもあるような普通の生活になった。本を読むことが好きでこれと言って目立つこともない無名の人である。あるとき著者は父が一度やめていた作句を再開したことを知る。父の句を読み、それを解釈しようとする中で無名の人生を追いかける。

世の中の99%以上は無名の人生と言って差し支えないと思う。いや、もっと多いかもしれない。日本の総理大臣になったって、10年もすれば忘れられる。10年前の総理大臣を覚えている人がどれだけいるだろう。私はまったく覚えていない。

本書を読んでうらやましかったことがある。それは著者と父の会話の言葉遣いだ。

「もしかして、お父さんはとんでもなく長生きするのかもしれませんね」
「そうかな」
「でも、八十九歳だなんて、もう充分すぎるくらい生きたでしょう」
「いや、その数字は少しキリが悪いな」
「というと、九十歳くらいまで生きるつもり?」
「それもキリがよすぎるな」
「九十一歳まで?」
「それくらいがいいかな」

本書でもちょっと触れているが、これを聞いて「他人みたいな話し方だ」と言う人もいる。しかし私はこういう言葉遣いの中にお互いを認めている空気を感じる。私は、敬語は決してよそよそしい言葉ではないと思うし、そこにはやさしさだとか尊敬だとか愛おしさがあると思う。

そう思いながら私は父にこういう話し方をすることができないでいる。今更変えるのもどうかと思うので、もうこのままいくが、やっぱりいいなあと思う。こういうのが洗練された大人の言葉遣いだと思う。

そうそう、この本は最初から最後までスワンタッチを使ってみた。といっても、このブログでスワンタッチを紹介したときにこの本で試したのがそのまま残っていただけなのですが。使い心地は良かった。ページを繰るたびに栞が追いかけてくる様はなかなかおもしろく、かわいくもあった。

ただし。後ろの見返しに貼って使っていたのだが、本が終わりに近づくとページの重みが少なくなって見返しがたわむ。するとスワンタッチが剥がれてしまうのだ。裏表紙に貼るのもねえ・・・。

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