古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト marginalia.jp
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト

狂人の太鼓(ネタバレ注意)

昨日も触れたが、本書は文字のない小説である。無謀にもほとんど全頁に渡って、私なりの解釈を書こうと思う。すでに三軒茶屋というウェブサイトで同様のことをしているのでそちらも参考にして欲しい。以下はあくまで私の解釈であって正解とは限らない。また、何日か後、私自身解釈を変えているかもしれない。

もし、この記事を読んで違うご意見があればぜひともお知らせいただきたいと思う。そういうのを比較して話をするのっておもしろいよね。

それでは、はじまり、はじまり。

第一章

長いサーベルを腰に差した一人の男が、島に来た。男は辺りを歩くうち、太鼓を一心不乱に叩く黒人を見かける。太鼓の胴には奇妙な絵柄(人の顔)があった。その太鼓が欲しくなった男は、黒人を殺し太鼓を奪う。そして奴隷として売るために黒人達を無理矢理船に乗せ海に出る。そうして連れてきた黒人を白人に売りつけた。

注)男はこれから家に帰るのだが、家に着く前に、もう一枚航海の絵が入る。これは三角貿易三角貿易 ってことだろうか。ある大陸で黒人を仕入れ、それを別の大陸で売り、そして別の大陸にある我が家へと帰る。そうすると18世紀の話だろうか。

長い長い道のりを経て、ようやく家についた男は妻と子に迎えられる。奴隷売買で得た莫大な資産と一緒に、あの太鼓も持ち帰った。いままで小さな家に住んでいた男は、高台にある大きな屋敷を買い取り、そこで家族とともに暮らし始める。暖炉には商売で使ったサーベルやあの太鼓を誇らしげに飾った。

莫大な資金を得た男は町の名士となったが、一方で陰口を叩く者も出始めるようになった。

第二章

男の息子も時とともに成長する。ある日、無邪気な息子は父の記念品の太鼓で遊ぼうとしたところを見つかってしまう。太鼓のバチで殴られ、こっぴどくしかられてしまった。

男は太鼓の代わりになるようにと、町で見かけた本を子供に与える。そうして子供は本の世界に閉じこもるようになる。父の絶対的な権力の前に、母親ともそれほど近づくこともなく、いつしか冷えきった家庭になってしまったのだ。

しかし男は商売をしていた日々が忘れられず、サーベルを眺めながらもう一度商売をしたいと考えるようになる。そうしてある晩、男は妻と息子を残し一人旅立って行くが、その航海の途中で船は難破し、男は帰らぬ人となる。

第三章

父を亡くした息子は、成長しても相変わらず本にのめり込んでいた。裕福な家庭であるため、働かずに本を読み続けることができたからだ。いつしか聡明な青年に育ち、母も自分の息子を誇らしく感じている。ある日青年は蛾に興味を持ち、研究するようになる。

注)蝶ではなく蛾である。ここに青年の内面における異質な一面が表現されているように思う。

研究を重ね、論文を執筆して学会に提出するまでになった。教会に足を運ぶほど敬虔な生活を過ごしていたある日、手紙が届く。そこには彼の研究に対して送られた勲章が入っていた。青年はますます本に明け暮れるようになる。

注)ここでの季節は収穫の秋である。第三章の一枚目の絵は土を耕し、その次の絵では種を蒔いているので、ここまでで半年と考えるべきか。私は数年に渡る青年の成長が一つの区切りを迎えたと捉えるべきだと思っている。

第四章

青年は神を信じ、同年代の男達が酒や女にうつつを抜かす間にも勉強を続ける。そしてある日一冊の本に出会う。その本の影響で、青年は信仰を密かに捨ててしまう。

注)ここで階段に信仰の象徴である十字架が落ちている絵、母が階段から転げ落ちる絵、棺桶の前に青年が佇んでいる絵が続く。しかし十字架に足を取られて階段から転げ落ちて死んだ、などと言う即物的な状況には見えない。階段から転げ落ちる母の顔には何かに気がついたときに使われる表現が施されているので、息子がいつのまにか別人のように変わってしまったことに気づき、ショックを受けたと考えた方がいいように思う。

母も亡くなり、ついに青年は天涯孤独となる。そんなある日、青年は笛を吹きながら歩く男を見かけて声をかける。

注)笛吹きは今後も出てくるが、ここでは出会っただけである。私はこの笛吹きは悪魔か何かの化身ではないかと思っている。ハーメルンの笛吹き男ハーメルンの笛吹き男 という話があるが、この中で笛を吹く男は派手な衣装をまとった悪魔とされている。本書で笛を吹く男が何を意味するのかは最後までわからなかったが、少なくとも人間であるようには見えない。

第五章

注)いきなり宇宙の絵がある。社会における天文学への機運の高まりを示しているのだろうか。第四章で青年が信仰を捨てたきっかけとなった(と、私が考えている)本にはスフィンクスらしきものと星が二つ描かれている。スフィンクスの絵は何を意味しているのかわからない。

青年は天文学を志すようになった。日夜望遠鏡で天体を観測し、彗星を研究した。その研究は公に認められることとなる。

注)ちなみにハレー彗星が地球に18世紀中頃に接近しているが、このときの接近によってハレー彗星が76年周期の彗星であることが実証された。

いつしか青年もすでに青年とは言えないような年齢になり、ひとり暮らしている自分を振り返る。そうして彼は良家の娘と結婚した。

第六章

家庭生活は順調だった。娘二人に恵まれ、幸せそのものだった。しかし美しい妻は酒場に出入りをするようになり、ついに音楽家と恋に落ちる。順調と思っていた生活は表面上のことだけであり、妻は本にのめり込む夫にいやけがさしていたのである。ある日、妻は音楽家と駆け落ちをする。彼はまた孤独を味わうこととなる。ふと以前どこかで見かけた笛吹きが頭をよぎる。あの時は母がいなくなった。

一方駆け落ちした二人は貧しい暮らしを余儀なくされる。男は音楽家として身を立てられなかった。そうして女は死んでしまう。

第七章

彼には二人の娘がいた。長女は本が好きだったが、空想好きだった。

注)絵の中で長女が読んでいる本は、ハートに矢がささった絵がある本と、ガイコツにキスをしている絵がある本である。どちらも科学書ではないということを示したかったのではないかと思う。

ある日彼女は町中で一人の男に目を留める。男は労働運動家たちのリーダー的存在であった。当然公権力に目を付けられる。空想好きだった娘は世の中に疎く、彼の主張に耳を傾けるようになり、いつしかその男に恋をするようになった。

ところが、男は巧妙にしかけられた罠によってぬれぎぬを着せられ、投獄されてしまう。裁判では死刑判決がくだされ、長女は悲しみにくれる。いつしか労働運動も下火になって行く。そんな娘を見かねて、彼は彼女に正義と現実を教えようと本を与える。

注)ここで長女が読んでいる本に、「(目隠しをされた)天秤と剣を持っている女性」が描かれている。これはタロットカードの正義を表すカードだと思う。この絵にある女神が目隠しをされているので、社会の現実を表現しているのではないだろうか。けれど、表現としてはちょっと深みに欠けるかな。剣が逆さであることにも何か意味があるのかもしれない。

しかし長女は男への想いを断ち切れない。

注)ここから数頁がわからない。彼が何か書類を作成する絵、娘が読んでいた本を提示して裁判所で何かを訴える絵、天秤(裁判の象徴)が描かれた本を持って周りから賞賛されているような絵、男が処刑される絵と続く。彼が何をしたのかがよくわからない。男を助けようとしたようにも思えない。あるいは長女の無罪を主張したのだろうか。

想っていた男が処刑され、長女は悲しみのどんぞこに落ち、男の後を追う。

第八章

彼は相変わらずだったが、思い立って(長女と同じ轍をふませたくないということではないだろうか)次女に本を与える。しかし次女はまったく興味を示さない。ある日次女は若い男と出会い、ふらふらとついて行ってしまう。男と関係を持つが、男はそのことをあちこちで触れ回った。そんな男の軽薄さに気づいた次女は失踪する。

第九章

次女がいなくなったことに気づいた彼は不安に襲われる。あちらこちらで次女を探しているうちに、次女がついて行った男の家をつきとめる。そこは酒や女にうつつを抜かす男達のたまり場だった。ようやく見つけ出した男に次女の消息を尋ねると、次女が来ていた服を渡された。そうして彼は次女の身に起こったことを知る。

男は娘を捜す術もなく、ついには町中の大道芸などをやっているような盛り場で、聴衆に次女の消息を尋ねる。そして笑い者にされてしまう。

ついに男は家族は皆死んでしまったと思うようになり、またしても孤独に陥る。ついに彼はあの太鼓を持ち出し、どこからともなく現れた笛吹きと一緒にどこかへいなくなってしまう。

おしまい。

marginalia?

古本や古本市、本の買取、読書グッズ、本棚・書棚などについて書いています。私は読書が好きだし、楽しいことだと思っています。皆さんにも読書のある生活を楽しんでもらいたいと思ってます。

管理人のプロフィール

コメント / トラックバック

  1. 晋也
    2008年05月17日 土曜日 01時07分

    すっげぇ!
    そういう話だったのか…
    読解力もさることながら、それを人にわかりやすく伝える文章力はすばらしいです。
    じっくり読んでみたくなりました。

  2. 管理人
    2008年05月17日 土曜日 01時12分

    晋也さん

    よければ本を貸しますよ。まあ、絵もいいので蔵書にするべく買うのもオススメですが。

  3. 晋也
    2008年05月20日 火曜日 00時54分

    貸してください!
    買おうかと思ったけど、一度ちゃんと読んでから決めようと思います。

ご意見など

お名前
メールアドレス(公開されません)
ウェブサイト

トラックバックURL:

このページの先頭へ
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト marginalia.jp
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト
読書占い
Copyrights © 2008-2017 marginalia.jp all rights reserved.