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大人でなくてはこの不気味さは楽しめない 書評:江戸川乱歩傑作選

数日前、以前勤めていた会社の先輩が亡くなった連絡をもらった。享年62。私に残された時間はあとどれくらいだろう。そろそろ死というものについて再考する時期に来ているのかもしれないな。

さて、本書は文庫本で300頁はある。結構な量だがおもしろいのであっという間に読み終わる。書名の通り江戸川乱歩江戸川乱歩 のミステリーの短篇小説が9作掲載されている。

私はいままで江戸川乱歩はあまり読んだことがなくて、このブログでも紹介した「怪人二十面相」だけである。今更ながら思うことは、少なくとも本書は大人向けである。大人でなくてはこの不気味さは楽しめないと思う。

乱歩のデビュー作「二銭銅貨二銭銅貨 」も評価が高いようだが、私としては「人間椅子」と「芋虫」が傑作だと思う。

「人間椅子」とはまた随分と変わった作品名であるが、この変わり具合が納得いくほどに奇妙で不気味で迫ってくるストーリーは秀逸だと思う。ある醜い孤独な椅子職人がふとした思いつきで椅子の中に入りこむ。そうして男はいままでにはなかった「人との関わり」を持つようになる。しかしそれは一方的な関わりである。椅子は座る人を判別し、様々な感情を抱き、そして動き座り心地を変化させ、椅子としての役目を果たそうとする。感情を持った椅子はやがてある女性に恋をし、あろうことか告白をしようとする。

「芋虫」というのも内容を想像しにくい作品名だ。芋虫とは本書では人間である。手も足も耳も声もない人間である。キツイ喩えだねえ。外界と繋がっているのは目と口だ。目でものを言い、口で文字を書き、頭で床を叩いて音を出す。戦争によって不運にも体のほとんどを失った男は、生きていることを奇跡と讃えられ、勲章までもらった。しかし世間とは飽きやすいものだ。いつしか人目を忍んで暮らすようになった芋虫とその妻の生活は奇妙な状態になっていく。芋虫となってもやはり人間の男なのだ。そして妻もやはり人間の女なのである。芋虫はやがて階段を下り、どこか草むらの中へ消えていく。

これらの作品をミステリーと呼ぶべきなのかかなり迷う。ミステリーとは辞書で引けば「神秘的なこと、謎」「推理小説」とある。設定はどちらもまったくもってありそうもない話である。読み進めるにつれて、誰のともつかない人間のグロテスクな内面が、いま自分のいる部屋の隅から黒々と湧き出てくるような感覚は、ありそうもない設定を正当化してしまう。もしかしたら、この内面のグロテスクさが自分にもあるのかもしれない、と思ってしまうのだ。うえー、なんか自分がちょっとイヤになる。

けど、おもしろい。

解説によると「芋虫」はその描写によって戦時中発売禁止になったそうだ。ま、そういう風に読む人にとってはおもしろくもなんともないだろうな。ただ、グロいだけだ。

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