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薄くさしかかる朝日のような明るさ 書評:指と耳で読む 日本点字図書館と私

家でパソコンに向かっていると、娘が「おとうさん、なんで働くの?」・・・うーむ。こういうときに「家族の生活のためだ」と言いたくないのはなぜだろうか。

さて本書は著者、本間一夫が開館後40年を経てから日本点字図書館日本点字図書館 を振り返った一冊で、初版は1980年である。著者の自伝と言っても差し支えないだろう。

本間は5歳の頃に視力に異常をきたし、様々な治療を試みたが結果的に失明してしまう。北海道函館盲啞院在学中に点字図書館づくりをライフワークにしようと思い始め、1940年、本間が25歳のときに豊島区雑司が谷に日本点字図書館を開館する。

点字本を集めて貸し出すという機能はいまの図書館と変わりないが、たいした設備があるわけでもなく、借家で始めたささやかなものだった。運営費用の不足、点字本の不足、物資の不足、増え続ける貸出依頼、録音テープ作成という新規事業への進出など様々な困難を乗り越えて本間と日本点字図書館は成長していく。

初めての海外視察の折に職員に宛てた文章や、針治療を受けた隣にソニーの井深大井深大 がいて「ラジオのように音だけがでるテレビを作ってくれないか」と半裸で横になったまま陳情したらテレビ・サウンド・レシーバーとなって発売された、などのエピソードも興味深い。

本書を読み始めてすぐに感じたのが明るさである。この明るさは決して強すぎず、薄くさしかかる朝日のようである。失明にいたる経緯の描写にでさえ、悲観でも楽観でもなく「ま、そんなもんです」という潔さを感じるのだ。もちろんそうなれるまでには大変な苦労があったと思うが、視力を失いながらもそこまで成長できるというのはすごいことだと思う。

1章の扉に昭和52年撮影の本間の近影がある。「点訳奉仕者と語り合う著者」と添えてあるが、この穏やかな笑顔が非常に印象的だ。扉の写真と言えば、本書にはこれが2枚あってもう一方は点字をなぞる手の写真でだが、こちらも良い写真だと思う。

読書の数が増えてから、本を読んでいるとまったく関係のない本と同じ事実が記載されていて「ああ、あれのことだな」と思うことがでてきた。本書と関連を持つのは少し前に記事を書いた「平凡社における失敗の研究」である。

戦後の物資不足で紙が極端に少ない時代に点字書をつくりたかった本間と、新装版大百科事典を出したかった平凡社平凡社下中弥三郎下中弥三郎 は同じものに手を出したようだ。樺太から紙を輸送中に沈没してしまった船にあった紙を買ったのである。本間はこの紙は日本海中に2年あったと書いているが、「平凡社の〜」には引き上げ後2年間野ざらしになっていたと書いている。どちらが本当かはわからないが、もしかしたら全く違う紙なのかな。

こういうふうに、偶然に関連性が出てくるのも読書のおもしろさだよね。

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古本や古本市、本の買取、読書グッズ、本棚・書棚などについて書いています。私は読書が好きだし、楽しいことだと思っています。皆さんにも読書のある生活を楽しんでもらいたいと思ってます。

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コメント / トラックバック

  1. しゅう
    2009年03月16日 月曜日 12時49分

    俺も決して言わないよ「家族の生活のため」とは。
    あ?事情が違う?

  2. 管理人
    2009年03月16日 月曜日 21時30分

    しゅうさん

    お誕生日おめでとう、しばらくは私が年下と言うことになりますか。

    >あ?事情が違う?

    違う、違ーう。

    でもね、給料は家族の為だが、仕事は違うような気がするんだよな。

  3. […] […]

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