古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト marginalia.jp
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト

してやられた・・。 書評:ロートレック荘事件

諸般の事情によりバス通勤に切り替えた。定期券を買ったら紙に日付のハンコを押した昔ながらの定期券だった。なつかしい。

さて、本書はねえ、おもしろいよ。おもしろいけど、こういうおもしろさは小説としての面白さとはちょっと違うような気がするんだよな。よくこういうトリックを思いついたものだと感心する。著者は「宇宙衛生博覧会」以来ファンになった筒井康隆筒井康隆 である。

小さい頃仲良く遊んでいたイトコ同士の浜口重樹と浜口修。不慮の事故により重樹は障害をもつ身となってしまった。責任を感じた修は生涯重樹に付き添うことを決心する。そうして20年が過ぎた。ある日、画家ロートレックロートレック の蒐集家で資産家の木内が所有する別名「ロートレック荘」と呼ばれる別荘に招待を受け、複数の男女が集まることになった。

28歳にして画家として成功している浜口はまだ独身だったので、浜口と自分の娘を結婚させたいという木内が招待したのである。ロートレック荘に招かれたは若い女性が3人いた。木内の娘とその友達2人で、その誰もが浜口との結婚を望んでいたように思われた。しかし、その3人は次々に何者かによって銃殺されていく・・・。

私は本書を読み始めた時、最初の数頁目でいきなりつまずいてしまった。内容がハッキリ読み取れなくて、4〜5回読み返したのを覚えている。それでもわからなくて「ま、そのうちわかるだろ」と先に行ってしまった。いまにして思うとここが全ての始まりだった。読み終え振り返ってみると、筒井はわざとここでわかりにくく書いたのではないかと思う。何も知らない読者にいきなりトリックをつきつけ混乱させたのではないかと思うのだ。

トリックとは何か。実は犯人が読者の目の前にいながら隠れているのだ。うー、もっと詳しく書きたい。しかしこれほどのトリックはぜひとも体感して欲しい。私は生涯このトリックを忘れない自信があるゾ。ジャケットにある文章を紹介しておこう。「この作品は二度楽しめます。書評家諸氏はトリックを明かさないようにお願いします。」

後半にトリックが明かされる箇所がある。白状すると、私はその箇所を読んだ時「ん?・・・ん?ん?オマエ誰だ?」とそこから最初までズズーと遡って確認してしまった。さらに読み進めてから気がついた。「筒井にしてやられた・・。」と。

このトリックは正直言うと反則だと思う。反則だけど十分に評価したい。「宇宙衛生博覧会」を読んだ時私は「引く」という感覚を肯定的に受け止めることができた。今回は反則を肯定的に受け止めている。私は筒井によっていままでにない感覚を引きずり出されている。もう手元に筒井の未読本がないので次回は筒井を中心に古本を漁ってみようと思う。

装丁にも触れておきたい。装丁は平野甲賀平野甲賀 、トレーシングペーパー製のジャケットには平野特有の描き文字があり、表紙のロートレックの絵がうっすらと透けて見える。本文中にロートレックの絵がカラー印刷で数葉入っているのもいい雰囲気だ。

後半には「138ページ16行目」などの割注が入るところが数十カ所ある。こういうのって校正の段階で加筆・修正で行がずれるたびに確認しなくてはならないだろうから、編集は大変なのではないかと思うのだ。私ならもう少し本文中にアキというか逃げを用意しておくような気がするのだが、実際そういうアキがない。どうやって作るんだろう。意外と力技でどうにかするのだろうか。

もう、いろんな意味でお気に入りの一冊となった。

marginalia?

古本や古本市、本の買取、読書グッズ、本棚・書棚などについて書いています。私は読書が好きだし、楽しいことだと思っています。皆さんにも読書のある生活を楽しんでもらいたいと思ってます。

管理人のプロフィール

ご意見など

お名前
メールアドレス(公開されません)
ウェブサイト

トラックバックURL:

このページの先頭へ
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト marginalia.jp
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト
読書占い
Copyrights © 2008-2017 marginalia.jp all rights reserved.