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たかがテントなのに 書評:人生勉強

先日初めてSuicaというものを利用した。小銭がなくても両替する手間がいらないのはすごく便利だ。カードを翳して「ピッ!」だけ、すごい世の中になった。

さて、本書はいわゆる学力向上などがテーマではない、なんて言うまでもないよね。「人生いろいろあるさ。」を言い換えて「人生勉強」である。人生勉強・・・、精神的にも物質的にも余裕がないと言えないな、と思う。

本書は書き下ろしで特にテーマがあるわけではなく雑多なエッセイが詰まっているのだが、阪神・淡路大震災阪神・淡路大震災 の時のことに触れたものがある。1995年1995年 1月17日午前5時46分52秒、当時私は建築を学ぶ大学4年生だった。卒業が近いので卒業制作に追われはじめたころで、制作の友として教室にラジオを持ち込んでいた。午前中教室に到着すると、友人のMがラジオを聞きながら言った。

「おい、N。神戸がすごいことになってるぞ。」

当日、群は友人とスキーに行っていたそうである。朝方のニュースで知り、友人の安否を気遣いながらも昼間はスキーに夢中になる。しかし宿にもどるとまたテレビに釘付けとなり、友人の安否を気遣う。なんかわかるな、この微妙な他人事感。

大惨事が、大変なことが国内で起こっているとわかっていても、テレビでしかそれを見ないともう一つピンとこないと思ったことを覚えている。「”瓦礫の山”ってこのことなんだな」とホント他人事だった。建築を学んでいた私は建てることしか考えていなかった。壊れた建築物の骸を見たくなかったのかもしれない。あれほどの災害であっても全くと言っていいほど私には変化はなかった。

ところが、それから10年以上経って震災のことを思い出し、身近に感じたことがあった。と言っても比べることができるほど深刻な話ではなくて、むしろ笑い話である。

その前日から私は妻と一緒にキャンプに行っていた。妻がキャンプがしたいというのでテントやらテーブルやらを一式買いそろえ、車に積んで家から小一時間のオートキャンプ場に仮の住まいを設けた。随分寒かったことを覚えている。あまりの寒さに妻が具合が悪いと言うので、妻を車に寝かせ私は一人テントで寝た。

翌朝、妻と連れ立って併設してある温泉に行った。冷たくなった体には温泉がいい。妻も元気を取り戻し、テントに戻った。いや、戻ろうとしたらテントが崩れていた。風のせいだろうと思うがカーボン製の支柱が折れ、前のめりになりながらも辛うじて屋根の形は残っていた。いっそ跡形も無い方がまだ良かったかもしれない。

がっくり。

片付ける気にもなれなく呆然としていた。せっかく暖まったのに、無駄になった。気を取り直してテントを調べてみるが、とりあえずの復旧も無理そうなので片付けることにした。普段なら丁寧にテントを畳むのだが、もうどうでもよくなっていた。

帰る道すがら「家がなくなるってこういうことなんだな」と思った。阪神・淡路大震災からそれまでテレビでいくつも家が災害で倒壊したり、火災で真っ黒になったりしたのを見てきた。そのどれよりもテントの倒壊は応えたのである。たかがテントなのに。

いまとなっては笑い話だが、それ以来少しだけ、ほんの少しだけ壊れた家を見るのがつらくなった。私にとっての「人生勉強」であったと思う。そのテントは先日の引っ越しでようやく捨てた。

本書にはちょっとおもしろいデータがある。たまに見かけるのだが、装丁の仕様が記載してあるのだ。ジャケットの袖に、カバーは「パミス」表紙と見返しは「タント」を使っているそうだ。原稿枚数は400字詰めで267枚。こういうのって自費出版の参考になる。他の本もこうしてくれると、本の違った楽しみになるのではないかと思う。

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