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私には何かが足りない 書評:蹴りたい背中

第130回芥川賞芥川賞 受賞作、当時著者の綿矢りさ綿矢りさ が19歳だったこと、また、金原ひとみ金原ひとみ の「蛇にピアス」と同時受賞だったことから話題となった。

最近小説に手を出し始めた私は、おもしろいと思われる本を探すのがヘタなので、この際何か賞を受賞したものを読んでみようかと思っていた。そんな折り、ブックオフで100円になっていたので買ってみた。

以前ブログにも書いた、安達千夏の「モルヒネ」ほど散漫な感じはしないが、全体的にスポットの当たっている主人公の感情が小さく、それでいて細部の表現が緻密なため、力強さが足りないような気がする。私はそこに、著者の若さ故の時間の長さを感じた。

若い時は時間が長く感じるし、歳とともに一日が早くなっていく。感じる時間が長いとそこには感情の変化がより多く生まれる。その変化をひとつひとつたぐるように書いている、そんな気がした。著者と同世代の人にはおもしろいのかもしれない。

ストーリーの進行に破綻はないし、表現にイヤミもない。主人公の感情の移り変わりも理解できる。「蹴りたい背中」も象徴的に描かれている。つまるところ欠点らしい欠点はない、ように思う。

けれど、何かが足りない。

例えば映画を観ていて、登場人物がすごくイヤなヤツに感じる時がある。私はそれはその俳優が十二分に与えられた役をこなした結果だと思っている。つまるところ、その登場人物は私に取ってイヤなヤツなだけであって、その登場人物は映画の中で成功していると言える。

映画の中のヒーローに憧れ、魅力的なの女性にドキドキし、悪玉には正義の鉄槌が下って欲しい、そう感じて感情の起伏が激しくなるのがイイ映画ではなかろうか。

けれど、イイ映画とおもしろい映画は違う。

本来制作側が観る側に与えたい感情をストレートに感じる映画がイイ映画だと思っている。そして制作側が観る側に与えたい感情と観る側の要求が一致したとき、観た人にとっておもしろい映画となる。一致した人が多ければ、それはヒット作と呼ばれるようになるのだ。

本書は著者が読者に与えたい感情は十分に伝わると思う。それは読み終えた後に書名を見返してみて、その書名である理由がなんとなくわかるところからも証明できている。

しかし私が欲しているものとは違う、つまり何かが足りないのだ。それは、いまの私に足りないものなのかもしれない。「若さ」などと言ってはいけない、それを言っちゃあ、おしまいよ。

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コメント / トラックバック

  1. 晋也
    2008年04月29日 火曜日 01時53分

    本嫌いな僕ですが、話題の小説だけは読むようにしています。bulbulさんと対照的ですな…
    蹴りたい背中もそうですが、蛇にピアスは非常に面白いと思って読みました。唯一好きな作家が村上龍だということもあるのですが。
    bulbulさんが「何か足りない」と思うのは、たぶん知りすぎたからでしょう。
    僕が何を読んでも満足するのは、たぶん何も知らないからでしょう。
    おやすみなさい。

  2. 管理人
    2008年04月29日 火曜日 08時55分

    晋也さん

    >蛇にピアスは非常に面白いと思って読みました。

    じゃあ、次はそれ読んでみようかな。

    >唯一好きな作家が村上龍だということもあるのですが。

    げげ、マジか。私も村上龍は好きです。ただ彼の文芸ものはまだ読んだことはないのですが。「eメールの達人になる」というビジネス書を読んで好きになりました。

    村上龍を読んでみるのもいいかもしれない。

    おお、なんかワクワクしてきた。

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