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くずれない砂の城 書評:私家版

完全犯罪完全犯罪 、というのがある。小説や映画などでもおなじみのキャッチフレーズだ。完全犯罪といいつつも神のイタズラによって小さな小さな綻びが生じ、やがて完全犯罪は海辺の砂城のように崩れて行く・・・、のが普通だが、本書では砂城がそのまま残ってしまう。主人公のエドワード卿は出来上がったお城の中でニンマリしているのだ。

たとえ作り話であっても、完全犯罪とはそれが存在しないところに夢があるので、犯人が目的をなし遂げて満足している様子は、なかなか後味が悪い。

本書はフランス推理小説大賞受賞作。

エドワード卿は古くからの友人ニコラと自分を比較していつも劣等感を感じながら、彼の軽薄さを軽蔑して来た。その一方で彼に必要とされたいという想いも強く、ねじれた感情が彼の中にうずまいている。

18歳のときにエドワードはニコラと出会い、エドワードは光り輝くニコラに魅力を感じて彼につくすようになる。同じ頃、エドワードはベドウィン族の娘ヤスミナに恋をし、まだ幼いヤスミナと愛し合うようにもなっていた。ある日ヤスミナは川で死体となって発見される。彼女は妊娠していたのだ。ヤスミナは自分のせいで妊娠し一族としての恥辱を晴らすために殺されたのだと、エドワードは責任を感じ、それ以来女性に恋をしなくなった。

それから十数年が過ぎ、文筆家としてそこそこ成功していたニコラが彼の作品の翻訳出版を一手に引き受けているエドワードの元へ新作「愛の学校」を携えてやってくる。作品を最初に読んだエドワードはそれが傑作であること、描かれている教師がニコラで生徒がヤスミナであることを確信するのだ。「30年前、ヤスミナが殺された責任はニコラにある・・・。」

エドワード卿は復讐を誓い「愛の学校」の贋作を作り始める。「愛の学校」とほぼ同じストーリー、古い本の入念な調査と研究、古い用紙や製本材料、旧式の活版印刷技術に裏打ちされた彼の贋作は「愛の学校」に劣らない優れた私家版となった。ただ一点、私家版の方が古びて薄汚れていることを除いては。

さて、クライマックスはここから。人に復習するということは肉体的に痛めつけるのではなく精神的に痛めつけることだと悟っているエドワード卿はニコラを執拗に追いつめ、日向から日陰へ引きずりおろそうとする。そして、ニコラは自分の書斎で私家版を見つけたとき、ついに自決する。

最終的に果たされた復讐は主人公自ら手をくだしたわけではないので、復讐と言っても未必の故意という程度のものである。しかしこれほど綿密な計画となると完全犯罪と言えなくもない。トリックもトリックと言えるほど意外なものではないが、それでもこれをやられたら相当キツイだろうなと思う。

ただ、もうちょっと抑揚が欲しい。冷静な主人公が淡々と現実的な話を語るだけに、怖さも現実的すぎて少し物足りない感じがする。話の内容がおもしろいだけに、ちょっと残念。

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