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人を救う、人に救われるとはどういうことだろう 書評:最後の家族

これはおもしろい。村上龍村上龍 がいままで以上に好きになった。私にはかなりグサッとくる文章がたくさん入っている。数頁繰るごとにグサッ、ギクッ、ドキッ。

いきなりだが、あとがきから引用しよう。

(最後の家族 あとがき より)

この小説は、救う・救われるという人間関係を疑うところから出発している。誰かを救うことで自分も救われる、というような常識がこの社会に蔓延しているが、その弊害は大きい。そういった考え方は自立を阻害する場合がある。

以下、表現上どうかと思うが本記事では登場人物を相対的な続柄で呼ぶことにする。

営業一筋26年のサラリーマンの父、家族のために毎日を送る母、同級生とどうも反りが合わない妹、そして大学を中退して1年以上引きこもっている兄。この4人家族は兄の引きこもりと平行して、少しずつ崩壊してきた。会社が倒産するかもしれないという噂に怯える父、長男の引きこもりに悩む日々で偶然知り合った大工とセックスを伴わない浮気をする母、一時期引きこもりだった宝石デザイナーと精神的に深くなって行く妹、ただひたすらに心を閉ざして行く兄。

ある日、兄は隣家のドメスティックバイオイレンスを偶然目撃し、被害者の女性を救おうと考える。そこに変化が生まれるがしかし崩壊への流れはとまらない。

クリスマスイブ、久しぶりに全員が揃う家族はそれぞれの胸の内に覚悟を携えている。それゆえに誰かが自分の気持ちを押し通せば家族は崩壊すると思われた。しかし行き着いたはずの崩壊は、家族の救いそのものだった。

村上は本書で自らが疑っている「救う・救われるという人間関係」への答えは出してはいるように思うが、かといってそれを是としているようにも思えない。物語の上では最終的に家族それぞれが自立していくのだが、その自立は果たして家族としての幸せと言えるものだろうか。

その後、父は結局再就職できずに地元に一人戻って喫茶店を始めようとする、母はあらたな自分の人生を見いだすために社会参加を始める一方で離婚はせずに大工とちゃんとした(?)浮気をしている、妹は宝石デザイナーとイタリアへ旅立ち、兄は引きこもりをやめて自立への一歩を踏み出した。結果だけを見た人からすれば、子供はともかく夫婦は崩壊したように見える。しかし、お互いがお互いを家族と認めているし、それが自然に思われる。

人を救う、人に救われるとはどういうことだろう。いまの私にはまだ整理がつかないが、これだけは言える。救う、救われるという段階を抜け出さないとそれがわからない、青春と一緒だ。

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