古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト marginalia.jp
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト

とある地方都市の風景 書評:無理

合併でできた地方都市、ゆめの市で暮らす5人。ケースワーカー、東京の大学に進学したい女子高生、暴走族上がりの悪徳サラリーマン、新興宗教にすがるバツイチの48歳・女、県議会に出たい市議会議員、それぞれに事情があり、やりたいことがあるのになかなかそううまくは行かない日々。

しかし私の場合、本書の魅力はこの5人よりも舞台である「ゆめの市」にあった。

ゆめの市は景気が悪い地方都市で、街をあるけば知り合いを見かける、人口はそれなりにあるのに、噂はすぐに広まる田舎町。そして寂しげな雪が灰色の空に降る。

地方都市の錯覚

私が育った街にそっくりだった。それだけにゆめの市の描写は痛いほどよくわかる。奥田の出身地である岐阜市岐阜市 も同じなのだろうか。

そこには一度好きになってしまうと、あるいは、一度不満を持つと、それから抜け出せなくなるような居心地の良さ、悪さがある。本質的に自分の生活が土地のせいということは無いのだし、イヤなら出て行けばいいのにそうしない、できない。

結局は自分の気の持ちようだと思うのだが、良さ、悪さの一つ一つが風景として自分の目の前に映し出されてしまうような錯覚に陥る。

奥田流の群像劇は相変わらずのおもしろさ

本書に登場する5人の描写は相変わらずのおもしろさ、ストレートでわかりやすい。

我がままし放題で生活保護を食い物にしようとする不届きなヤツらと戦うケースワーカーは少しずつ心を蝕まれ、主婦を金で買うようになる。

引きこもりの男に拉致されてしまった女子高生の恐怖は次第にあきらめへと変わっていく。

老人相手にあこぎな商売をしているセールスマンは、別れた女房との子供や両親の生活を背負うようになって大人としての責任と喜びを感じ始めていく。

新興宗教に救いを求める女は、他の新興宗教から若い女を救い出そうとしてドツボにハマり、自分を見失っていく。

県議会に出ようかと考えている市議会議員は、「先生、先生」と呼びつつも面倒なことばかり持ち込むヤツらに嫌気がさしていく。

ゆめの市の風景は5人の想いをぼんやりと拡散させて、私の中にしみ込ませ、声にならない共感を連発させる。そして物語の最後には5人の想いが文字通り衝突して、また、ゆめの市の風景に吸い込まれていく。

人口が30万人以下の地方都市にお住まいの方、あるいは過去に住んでいた方、お薦めします。

marginalia?

古本や古本市、本の買取、読書グッズ、本棚・書棚などについて書いています。私は読書が好きだし、楽しいことだと思っています。皆さんにも読書のある生活を楽しんでもらいたいと思ってます。

管理人のプロフィール

ご意見など

お名前
メールアドレス(公開されません)
ウェブサイト

トラックバックURL:

このページの先頭へ
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト marginalia.jp
古本市・本の買取・読書グッズの情報サイト
読書占い
Copyrights © 2008-2017 marginalia.jp all rights reserved.