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古書の魔物に触れてみたくなる 書評:せどり男爵数奇譚

私は東京出張のときはよく神田の古書店街に行く。昨年の秋に行ったとき、ふと入った古書店の奥に、稀覯本コーナーが2階にあるという貼紙を見つけたのでどんなもんかと2階へ行ってみた。狭くて薄暗い階段を上がると、こじんまりとした中に男性が二人いて、たくさん本が並んでいる。

二人はチラと私を見ると、すぐに仕事に戻る。私はスーツこそ着ていたものの金持ちでないことはわかる格好だ。古書蒐集家の金持ちはスーツなんて着てないとも思うが、つまるところ害のなさそうなヒヤカシと判断されたのだろう。「貧乏サラリーマンで済みません」と謝罪の一つも言いたくなった。

・・・ そこには和書が圧倒的に多かった。しかし私の目に真っ先に目に留まったのは値札である。ほとんどがラベルに筆で「三十万」というように漢数字で書いてある。デパートなら「300,000円」とするところだ。「三十万」「四五万」「二八万」・・・、延々と続く。私はそこに魔物とも言える感情の塊を見たような気がした。「この本はこれだけの価値がある、これだけ払えば売ってやってもいい」とでも言いたげだ。

そんな魔物の世界に引きずり込まれる人が私はうらやましい。単なる物欲だと言われればそうかもしれないが、たくさんのカネと引き換えにしても欲しいものがある、それだけの価値を見いだす自信がうらやましいのだ。

せどり男爵とあだ名される紳士もその一人だ。戦争を生き延び、父の遺産をうけ、53になるまで童貞のまま古書を追い続けている。古書を追ううちに奇妙な出来事に遭遇し、運や勘、執念でその場を切り抜けるせどり男爵は自信に満ちている。

何十年も前から探している本が未亡人との一夜とともにやってくる。またあるときは手に入れた本の蔵書票に意味深げな文言が記されており、追って行くとそれは金塊の隠し場所へと繋がって行く。そんなミステリーがたくさんつまった人生だ。もちろん作り話であることは重々承知しているが、ついつい惹かれてしまう。

本書には不思議な逸話が6つある。読み始めるとおもしろくてどんどん引き込まれるが、第6話、姦淫聖書の装丁にまつわる話があまりにドギツクて引いてしまった。ここだけは私にはちょっと刺激が過ぎたようだ。

古書の魔物・・・、そんなものにほんの少しだけ触れてみたい、そう思わせる一冊である。

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古本や古本市、本の買取、読書グッズ、本棚・書棚などについて書いています。私は読書が好きだし、楽しいことだと思っています。皆さんにも読書のある生活を楽しんでもらいたいと思ってます。

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