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表現は決して穏やかではない 書評:チョコレート工場の秘密

子供向けの物語とは思えない。

確かに主人公は子供だし、ストーリーもそうだ。けど、読んでいてなにか引っかかる。どうもおかしい。Amazonでの書評を見てみる。Amzaonには評価の分布を示すグラフがあるが、80も評価がついていて、なおかつ「星5つ」から「星1つ」まで非常にばらけている。

主人公のチャーリー・バケツ君を含む5人の子供が登場するが、チャーリー以外は人間の欲を小さくまとめたような子供だ。

ただ、読んでいるとホントにそういう人がいそうな気がして、あまりにリアルで苦笑してしまう。純粋なおもしろさではない。登場人物がみな大人だったら、大人向けの短篇としては面白いような気がする。訳者も書いているが、ブラックユーモアの方が強い。

とにかく僕の言いたいのは、「チョコレート工場の秘密」のブラックユーモア、というか、こげ茶色ユーモア、チョコレートユーモアをお読みいただきたいということです。(チョコレート工場の秘密:訳者から より)

チョコレートユーモアという表現はなかなか当たっているような気がする。本当に子どもたちはこれを読んで楽しいと思うのだろうか、という疑問が頭から離れない。

人間の欲を小さくまとめた子どもたちを嘲る表現は決して穏やかではない。子供のやったことへの表現はともかく、(例え空想上の人物であろうとも)容姿を蔑む表現は大人なら絶対に使わないようなものばかりだ。

「子供向け」とあると、どうもそういうつもりで見てしまう。しかし、実際に子供はその本から言葉を覚えるのだから、よくよく吟味する必要があると思う。

私はいわゆる教育上の「汚い言葉」を教えるなと言いたい訳ではない。汚い言葉だって表現の一つとして、他と同様重要だ。つまりは時期が重要だと考えている。

子供は善悪の区別が弱い。大人の反応で自分の中での物事の位置を決めているように思う。きれいな言葉であっても汚い言葉であっても親が反応すると、その言葉は子供の中での相対位置が大きく変わってしまう。この本は子供が言葉の相対位置を自分で決めれる年齢になるまでは渡さない方がいいのではないだろうか。

買ってすぐに子供に渡すのは避けた方がいい。一度買い与える側が読み、子供に渡す時期を選ぶべき本ではなかろうか。

一方、緒方修一による装丁は美しい。上製本と表現しているがかなり柔らかい表紙は並製本に近い。チリがあって、丸背だから上製本という感じだ。スピンの明るい緑は子供向けの本という印象を強くする。

本扉は2色刷りだが柄入りのトレーシングペーパー、これは私が自分の結婚式のときに自作した「ご案内」に使った紙と同じで、ちょっと驚いた。本文はスミ、イラストとノンブルと柱は明るい茶色、つまり2色刷り、いいなあ。ウンパッパ・ルンパッパ人の歌の部分は基線をずらすなど組版へのこだわりも感じる。

いずれにせよ、大好きな俳優、ジョニー・ディップが主演する「チャーリーとチョコレート工場チャーリーとチョコレート工場 」が見たくなった。ティム・バートンティム・バートン なら、この児童文学を大人向けの娯楽作品に変身させてくれるに違いないからだ。

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古本や古本市、本の買取、読書グッズ、本棚・書棚などについて書いています。私は読書が好きだし、楽しいことだと思っています。皆さんにも読書のある生活を楽しんでもらいたいと思ってます。

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コメント / トラックバック

  1. 五月
    2008年04月12日 土曜日 14時51分

    ロアルド・ダールは「あなたに似た人」という大人向け短編集も出していて、なかなか戦慄ものだったけど、今手元に無いので内容はちょっと忘れてしまいました。風刺がキツいんですよね。でも名作と思います。

    「チョコレート工場の秘密」は陰鬱な挿絵の雰囲気も相まって、ダークファンタジーというか、風刺が効いてるあたり、ガリバー旅行記(かなり辛辣、悪意有り)とかにも通じるものがあるかも。小学高学年になると、こういうのも大丈夫になってきます。ていうか、愛読書でした。容貌に対する差別的表現ていうのは、その子の習癖からくるもの(際限の無い食いしん坊とか、際限なくガム噛んでるとか、わがままの金切り声とか)なので、ストーリー的にはやむを得ないかも…。

    読む時期ていうのは、確かにあると思う。この本を自分で読めるようになって、自分で選び取るようになったら、その時期かなという気がします。親(という立場)が与えるんでなくて、図書館とかで自分で、というのが正しいような…。

  2. 管理人
    2008年04月12日 土曜日 20時37分

    五月さん。

    > 風刺がキツいんですよね。

    ああ、この方が表現として適切ですね。私は原文を読めませんので、どういう描写が言外に込められているかはわからず、翻訳に頼るしかないのが残念です。ガリバー旅行記は子供の頃に読んだような話とは全然違うと聞いているので、いつか読んでみようと思っています。

    > 図書館とかで自分で、というのが正しいような

    親として読ませたくない本を手に取ったりしないものでしょうか。図書館にはそんな本ないか。

  3. 五月
    2008年04月12日 土曜日 21時57分

    いやぁ、とりあえず児童コーナーにはないと思います。
    弘前市民図書館は全部ワンフロアだけど、私が通った時期の県立図書館は児童専門の部屋になってました。司書さんと距離が近いというか。そういうのがいいよね。こどもだけでも行き易い。司書さんに話しかけ易い。弘前市民図書館は司書さんが遠い感じなので、親が一緒の方がいいかも…。

    でも、あとから思ったんだけど、グリム童話とか、日本の民話とかでも、かなり残酷だったりするんですよねぇ…。こどものときはそんなの気付かないで読んでたけど…。それを思うと、逆にあまり神経質にならなくてもいいのかも、という気が…。

    ていうか、ふだんの育て方がちゃんとしてたら、そこらへんの感性はある程度信頼して大丈夫なんじゃないかな。こどもでもこどもなりにちゃんと考えてると思う。いじめはゆるさないとか、ごみを道に捨てないとか、困った人がいたら助けるとか、そういうごく普通のことをふだんからちゃんと教えていれば…。ヨシヒロさんちは大丈夫と思いますよ…!

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